川岸功路(旧制19回)
我々永契19回生は旧制化学科の最後の卒業生として今から丁度半世紀前の1953年3月に中之島の理学部校舎を巣立ちました。正確に50年前に旧制と新制のバトンタッチがあったわけです。この時のクラスメートの渡邊英二君が今回永契会の新会長に就任することになったのも不思議な巡り合わせのような気がします。
長い永契会の歴史のなかで数々の輝かしい業績を挙げて、学界に社会に多大な貢献をしてこられた先輩後輩諸賢の活躍は同窓として誠に誇らしい思いです。
わがクラスメートも大部分が第一線から退き、時間の余裕ができるようになったので、一昨年は東京で、昨年は10月22日に大阪でクラス会を持ちました。昨年は現存者25名の内18名が出席という盛会で、関東9名関西9名でドイツ暮らしの多い奥田君を含め久闊を叙した次第です。
優れた先輩方に続き我々の仲間でも各界で活躍する者が多く、渡邊君(元日揮会長、日本化学工学会会長、勲三等)以外にも、長らくNYのロックフェラー大学においてガン研究の最先端の仕事をされ、ノーベル賞候補とも目された花房秀三郎君(文化勲章受賞、学士院会員)や固体の非平衡現象の研究で学士院賞を受けられた菅宏君(勲3等)、その他多士済々とは些か自賛が過ぎるかもしれませんが、それぞれの分野での権威者がかなりいるようです。
クラス会ではお定まりの健康談義から学界業界の事情紹介もあり、海外視察あるいは遊覧報告、さては趣味の世界にまで話題は広がり、まことに力強い限りでした。
閉会後、馬場、佐武、前川、川岸の4名が堺市上野芝にお住まいになる村橋俊介先生をお訪ねしました。94才になられる先生は奥様ともども実にお元気で、50年前の弟子達の報告に興味深く耳を傾けられ、時には的確な指摘をされるなど、五感記憶力とも頗るご健康なご様子に感嘆しました。萩原先生、故大塚先生、滝沢先生はじめ我々が教えを受けた先輩方のご消息や研究室時代の懐旧談も出て時を忘れて歓談させて頂きました。瞬く間に夕暮れが迫り、往時と少しも変わらぬ温容に師恩を改めて感じつつ辞去したことでした。